今ぞ知るあかぬ別の

[詞書]男のはじめて女のもとにまかりてあしたに、雨の降るに帰りてつかはしける



今ぞ*1知る あかぬ別の 暁は
君をこひぢ*2に ぬるゝものとは


よみ人しらず(後撰集・恋一・五六七)


今はじめてわかりました。名残の尽きない別れをせねばならない暁は、貴女が恋しくて堪らなくなって、わが恋に涙してしまうものなのですね。
(一時の別れがこんなに辛いものだとは……私とともに、空も泣いてしまうくらいに)

*1:ぞ−知る:係り結び〈強意〉

*2:「恋ひ」と「恋路」の掛詞

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