今ぞ知るあかぬ別の

[詞書]男のはじめて女のもとにまかりてあしたに、雨の降るに帰りてつかはしける



今ぞ*1知る あかぬ別の 暁は
君をこひぢ*2に ぬるゝものとは


よみ人しらず(後撰集・恋一・五六七)


今はじめてわかりました。名残の尽きない別れをせねばならない暁は、貴女が恋しくて堪らなくなって、わが恋に涙してしまうものなのですね。
(一時の別れがこんなに辛いものだとは……私とともに、空も泣いてしまうくらいに)




まだ紹介できていない「古今集」の歌はたくさんあるんですが、今日からは「後撰集」からも選んで紹介していきたいと思います。
古今集」と「後撰集」は成立年も比較的近く、「古今集」に多く歌を採られている歌人も引き続き登場します。

個人的に思っていることなんですが……「古今集」も「後撰集」も、よみ人しらずの歌に素敵な歌が多いんじゃないかと。
勅撰和歌集に採られた選りすぐりの歌なのだからどれもレベルの高い歌なのはもちろんなんですけど、何となく、わたしの好きな感じの歌が多いような気がします。

*1:ぞ−知る:係り結び〈強意〉

*2:「恋ひ」と「恋路」の掛詞