カテゴリ紹介と注意事項

【古今集】… 最古の勅撰和歌集である『古今和歌集』に収められている歌。 【月】… さまざまな「月」の歌。(「有明の月」は除く) 【有明の月】… わたしが心を惹かれてやまない「有明の月」の歌。 【暁】… さまざまな「暁」の歌。 【雑】… 未分類の歌。 【百…

長からむ心も知らず

[詞書]百首歌たてまつりける時、恋のこころをよめる 長からむ*1 心も知らず 黒髪の 乱れてけさは 物をこそ*2思へ 待賢門院堀河*3(千載集・恋三・八〇二) この想いは末永く続くだろう、と仰る貴方の気持ちも、信じてよいのかわからないのです。 寝乱れた黒…

あたら夜の月と花とを

[詞書]月のおもしろかりける夜、はなをみて あたら*1夜の 月と花とを おなじくは あはれしれら*2ん 人に見せばや*3 源信明*4(後撰集・春・一〇三) 明けてしまうのが惜しいほどの夜、月と花とを同時に観賞したら、「あはれ」という言葉の意味が自然とわかる…

春霞たなびきにけり

[詞書]延喜御時、歌めしけるにたてまつりける 春霞 たなびきにけり 久方の*1 月の桂も 花や*2咲くらむ*3 紀貫之(後撰集・春上・一八) 春の霞がたなびく季節になったのだなあ。月に生えているという桂の木も、今頃、花を咲かせているのだろうか。 (秋に美…

今ぞ知るあかぬ別の

[詞書]男のはじめて女のもとにまかりてあしたに、雨の降るに帰りてつかはしける 今ぞ*1知る あかぬ別の 暁は 君をこひぢ*2に ぬるゝものとは よみ人しらず(後撰集・恋一・五六七) 今はじめてわかりました。名残の尽きない別れをせねばならない暁は、貴女が…

月夜にはそれとも見えず

[詞書]月夜に梅花を折りてと人のいひければ、折るとてよめる 月夜には それとも見えず 梅の花 香をたづねてぞ*1 しるべかりける 凡河内躬恒(古今集・春上・四〇) 月夜には、梅の花は月の光にまぎれてしまっています。でも、その芳しき香りをたどれば、見つ…

明日知らぬわが身とおもへど

[詞書]紀友則が身罷りにける時よめる 明日知らぬ わが身とおもへど 暮れぬ間の けふは人こそ かなしかりけれ 紀貫之(古今集・哀傷・八三八) 私の命も明日を知らぬ儚いものだとわかっていても、命がある今日はただ、あなたの魂が空へと昇ってしまったことを…

ふたつなき物と思ひしを

[詞書]池に月の見えけるをよめる ふたつなき 物と思ひしを 水底の 山の端ならで*1 いづる月かげ 紀貫之(古今集・雑上・八八一) この世にふたつとないものだと思っていたのに、水底から、山の端ではないところなのに月が出てきている。 (こんなところにも…

小夜ふけてあまのと渡る

[詞書]題しらず 小夜ふけて あまのと*1渡る 月影*2に あかず*3も君を あひ見*4つるかな よみ人しらず(古今集・恋三・六四八) 夜が更けて、天上の道を渡ってゆく月の光のもと、時を忘れていつまでも貴女と契りを結んだことです。 (美しい月の光に包まれた…

おそくいづる月にもあるかな

[詞書]題しらず おそくいづる 月にもあるかな あしひきの*1 山のあなた*2も 惜しむべらなり よみ人しらず(古今集・雑上・八七七) 夜遅くに出てくる月であるなあ。山の向こうも、月が空を昇っていってしまうのを惜しんでいるかのようだ。 (きっと、私たち…

我が心なぐさめかねつ

[詞書]題しらず 我が心 なぐさめかねつ 更級*1や をばすて山*2に 照る月を見て よみ人しらず(古今集・雑上・八七八) 私は自らの心を慰めることができずにいます。更級の姨捨山に照る月を眺めていると。 (美しく照る月は私の悪しき心を明らかにして、私を…

今来むといひしばかりに

[詞書]題しらず 今来むと いひしばかりに 長月の ありあけの月を 待ちいでつるかな 素性*1(古今集・恋四・六九一) 今からお訪ねしますと貴方が仰ったばかりに、私は長月の夜長をやり過ごし、とうとう有明の月が見える頃まで貴方を待ち続けてしまいました。…

月夜よし夜よしと人に

[詞書]題しらず 月夜よし 夜よしと人に 告げやらば 来てふ*1に似たり 待たずしも*2あらず よみ人しらず(古今集・恋四・六九二) 月が綺麗です、素敵な夜ですよと貴方に知らせたとすれば、来て下さいと言っているのと同じことです。決して待っていないわけで…

おほかたは月をも愛でじ

[詞書]題しらず おほかた*1は 月をも愛で*2じ これぞこの つもれば人の 老いとなるもの 在原業平(古今集・雑上・八七九) そもそも私は月をも賛美しないだろう。月が昇って沈む、欠けては満ちる、その繰り返しが積もり積もれば、人の老いとなるのだから。 …

かつ見ればうとくもあるかな

[詞書]月おもしろしとて凡河内躬恒*1がまうできたりけるによめる かつ*2見れど うとく*3もあるかな 月影の いたらぬ里も あらじと思へば 紀貫之(古今集・雑上・八八〇) 今宵の月を美しいと見る一方、薄情にも感じられてしまう。この美しい月影が届かない里…

月影にわが身を換ふる

[詞書]題しらず 月影に わが身を換ふる 物ならば つれなき人も あはれ*1とや*2見む 壬生忠岑(古今集・恋二・六〇二) もし私のこの身を月の光に換えられるなら、つれないあの人も、風情ある月を眺めるように私のことを見てくれるでしょうか。 (私は、あの…

月やあらぬ春や昔の

[詞書] 五条のきさいの宮のにしのたいにすみける人に本意はあらでものいひわたりけるを、睦月のとをかあまりになむほかへかくれにける、あり所はききけれどえ物もいはで、又の年の春むめの花さかりに月のおもしろかりける夜、こぞをこひてかのにしのたいにき…

しのぶれど恋しき時は

[詞書]題しらず しのぶれ*1ど 恋しき時は あしひきの*2 山より月の 出でてこそ*3くれ 紀貫之(古今集・恋三・六三三) 逢いたい気持ちを抑えていても、貴女を恋しく思った時は、山から月が出てくるように貴女のもとを訪ねてしまうのです。 (またすぐにお訪…

朝ぼらけ有明の月と

[詞書]やまとの国*1にまかれりける時に、雪のふりけるを見て詠める 朝ぼらけ*2 ありあけの月と 見るまでに 吉野*3の里に 降れる*4しらゆき 坂上是則*5(古今集・冬・三三二) 夜明け頃、空に残った有明の月の光が明るく射しているのかと見紛うほどに、吉野の…

ワンポイントまとめ

・助動詞「り」 ・疑問の系助詞と係り結びの法則 ・和歌の修辞『物名』 ・接続語「み」 ・時を表す単語 ・「なむ」の見分け ・已然形+「ば」 ・未然形+「ば」

おほぞらの月のひかりし

おほぞらの 月のひかりし*1 清ければ 影見し水ぞ*2 まづこほりける よみ人しらず(古今集・冬・三一六) 空に昇った月の光があまりに冷たく清らかなので、その光を見た水がまず氷ってしまったようだなあ。 (冬の澄み切った夜空は、冴え冴えとした月の美しさ…

月夜には来ぬ人待たる

月夜には 来ぬ人待たる*1 かき曇り 雨も降らなむ*2 わび*3つつも寝む よみ人しらず(古今集・恋五・七七五) 月夜だと、来てくださらないと知りながらもつい貴方を待ってしまいます。空が曇って月を隠し、雨も降ってほしい。そうすれば、淋しく思いながらも…

逢ひに逢ひて物思ふころの

逢ひに逢ひて 物思ふ*1ころの わが袖に やどる月さへ ぬるゝ顔なる 伊勢(古今集・恋五・七五六) 何度も貴方とお逢いしているのに、相変わらず恋わずらって涙している私の濡れた袖に宿る月までもが、涙で濡れた顔をしています。 (私の思いがこれほどまでに…

ほとゝぎす夢かうつゝか

ほとゝぎす 夢かうつゝか 朝露の*1 おき*2て別れし 暁のこゑ よみ人しらず(古今集・恋三・六四一) ホトトギスの声を聞いたと思ったのは、夢だったのか、それとも現実のことだったのか。朝露の置く暁の頃に目覚めて別れた貴女との思い出も、私にとってはそ…

佐保山のはゝそのもみぢ

佐保山*1の はゝそ*2のもみぢ 散りぬべみ よるさへ*3見よと 照らす月影 よみ人しらず(古今集・秋下・二八一) 佐保山の柞の紅葉が散ってしまいそうなので、日中だけでなく夜までも見よと言いたげに月が木々を照らし出している。 (秋の月までもが散るのを惜…

秋くれば月の桂の

[詞書]かつらのみや 秋くれば 月の桂の 実やは*1生る*2 ひかりを花と 散らすばかりを 源恵*3(古今集・物名・四六三) 秋が来ると、月の桂に実は生るのだろうか。光を花のごとく、散らしているだけのように見えるけれど。 (あまりに惜しみなく光の花弁を散…

天の原ふりさけ見れば

[詞書]もろこしにて月を見てよみける 天の原 ふりさけ見れば 春日なる*1 三笠の山*2に 出でし月かも*3 安倍仲麻呂(古今集・羈旅・四〇六) *百人一首 七番 大空を振り仰ぐと、美しく風情のある月が出ていた。あの月は、若い頃に幾度となく眺めた、春日にあ…

久方の月の桂も

[詞書]是貞のみこの家の歌合によめる 久方の*1 月の桂*2も 秋はなほ もみぢすればや*3 照りまさるらむ 壬生忠峯(古今集・秋上・一九四) 月に生えているという桂の木も、やはり秋に紅葉の時期を迎えるから、秋の月は一層美しく照り輝くのだろうか。 (きっ…

秋の月山辺さやかに

秋の月 山辺*1さやかに 照らせるは 落つるもみぢの かずを見よとか*2 よみ人しらず(古今集・秋下・二八九) 秋の美しい月が山辺を明るく照らしているのは、まるで落ちているもみじ葉の数を数えてみろと言われているかのようだ。 (それほどに月の光が明るい…

有明のつれなく見えし

有明*1の つれなく*2見えし 別れより 暁ばかり 憂き*3ものはなし 壬生忠岑(古今集・恋三・六二五)*百人一首 三十番 有明の月が、まるで貴女のようにつれなく見えたあの別れから、私にとって暁の時間ほどつらいものはないのです。 (月を見るたび貴女を思…