秋の月山辺さやかに

秋の月 山辺*1さやかに 照らせるは
落つるもみぢの かずを見よとか*2


よみ人しらず(古今集・秋下・二八九)


秋の美しい月が山辺を明るく照らしているのは、まるで落ちているもみじ葉の数を数えてみろと言われているかのようだ。
(それほどに月の光が明るい夜、紅葉の美しさもまた格別である)


★文法★

助動詞「り」
 意味[1]完了(〜タ、〜テシマッタ)
   [2]継続・存続(〜テイル、〜テアル)
 接続:四段活用・已然形、サ行変格活用・未然形



最近、寺社での夜間ライトアップというものがあたりまえのようになっています。
ニュースのドキュメントか何かで、綺麗に美しく見せる光の工夫などが取り上げられていて、それはそれでひとつの表現方法なのだと思いましたが、わたしはどちらかというと好きではありません。
せっかく夜間の拝観ができるのなら、わたしはこの歌のように、月の明るい日に月の光だけで、寺社を眺めてみたいなあと思うのです……。

*1:やまべ〔名〕山のほとり

*2:か〔係助〕:疑問・反語の意味を持つ助詞