久方の月の桂も

[詞書]是貞のみこの家の歌合によめる


久方の*1 月の桂*2も 秋はなほ
もみぢすればや*3 照りまさるらむ


壬生忠峯(古今集・秋上・一九四)


月に生えているという桂の木も、やはり秋に紅葉の時期を迎えるから、秋の月は一層美しく照り輝くのだろうか。
(きっとそうに違いない。地上からは見えないが、月の桂が色づいた美しさとはどれほどのものなのだろう!)


★文法★

疑問の係助詞と係り結びの法則
 「や」「か」…疑問・反語の意味を持つ係助詞
 これが文中にある場合、文末の用言*4連体形に変化する。(通常、文末の用言は終止形である)



例年より綺麗だったという今年の紅葉も、もう終わりかけでしょうか。
地面に積もった落ち葉をさくさくと踏む感触が、何となく好きだったりします。
今年は石山寺へ紅葉を見に行き、小さな紅いもみじの葉を一枚、拾って帰ってきました。
紅葉というとやはりもみじの赤色が一番に上げられるのでしょうが、わたしは黄色の紅葉も好きです。
この歌で取り上げられている桂の木も、黄色く色づきます。

*1:久方の〔枕詞〕:雨・月・雲・空・光などにかかる。

*2:月の桂:古代中国の伝説では、月には大きな桂の木が生えていると言われていた。

*3:や〔係助〕:疑問・反語の意味を持つ助詞。

*4:用言:活用のある語。動詞・形容詞・形容動詞・助動詞を指す。