佐保山のはゝそのもみぢ

佐保山*1の はゝそ*2のもみぢ 散りぬべみ
よるさへ*3見よと 照らす月影


よみ人しらず(古今集・秋下・二八一)


佐保山の柞の紅葉が散ってしまいそうなので、日中だけでなく夜までも見よと言いたげに月が木々を照らし出している。
(秋の月までもが散るのを惜しむほど、佐保山の紅葉は美しい。)



★文法★

接尾語「み」

 意味:原因・理由(〜ノデ、〜カラ)
 ※活用が形容詞・形容動詞型の助動詞の後ろにつく。ク活用型には『語幹*4+み』、シク活用型には『終止形+み』。



月に擬人法が使われている歌です。
例年より綺麗だったという今年の紅葉も、月は惜しんでくれたのでしょうか。

*1:さほやま〔歌枕〕:奈良市北部、佐保川の北側にある丘陵。京都府との境をなす。もみじの名所。

*2:柞〔名〕:ナラやクヌギなどの総称。

*3:さへ〔副助〕:添加の意味を持つ。(〜マデモ)

*4:ごかん:用言のうち、活用しない(形が変わらない)部分。