ほとゝぎす夢かうつゝか


ほとゝぎす 夢かうつゝか 朝露の*1
おき*2て別れし 暁のこゑ


よみ人しらず(古今集・恋三・六四一)


ホトトギスの声を聞いたと思ったのは、夢だったのか、それとも現実のことだったのか。朝露の置く暁の頃に目覚めて別れた貴女との思い出も、私にとってはそのように儚いものに思えるのです。
(貴女の余韻を忘れぬうちにまたお逢いしたいという私の願いを、貴女は叶えて下さるでしょうか)



★時を表す単語★
 ・(あかつき):夜明け前。まだ空が暗い頃を指す。
 ・東雲(しののめ):夜明け方。夜が明ける少し前。
 ・(あけぼの):夜がほのぼのと明ける頃。空が明るくなりはじめている頃を指す。
 ・(あした):夜が明けた朝の時間。
 ・(ゆふべ):夕方。宵。日没の頃。
 ・(よひ):日が暮れてから夜中までの時間。夜。狭義では、日没から数時間の「宵の口」を指すこともある。
 ・(よる):日の沈んだ暗い時間。
 ・夜半(よは):夜。夜中。夜ふけ。


 「月」の次にわたしが心惹かれる単語が「暁」です。
 朝になりきらぬ、空が暗い頃。平安時代等の貴族の男女が逢瀬を終え、別れる時間です。
 暁の頃まで残って見える月はすべて、「有明の月」です。
 空がまだ暗いので、月の冷たさがより一層引き立てられます。
 「暁」は、わたしが「月」の中でも最も美しい風情を感じる「有明の月」とも深い関わりのある単語なのです。

*1:あさつゆの〔枕〕:「消」「いのち」「おく」にかかる。

*2:「置き」と「起き」の掛詞。