2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

月夜にはそれとも見えず

[詞書]月夜に梅花を折りてと人のいひければ、折るとてよめる 月夜には それとも見えず 梅の花 香をたづねてぞ*1 しるべかりける 凡河内躬恒(古今集・春上・四〇) 月夜には、梅の花は月の光にまぎれてしまっています。でも、その芳しき香りをたどれば、見つ…

明日知らぬわが身とおもへど

[詞書]紀友則が身罷りにける時よめる 明日知らぬ わが身とおもへど 暮れぬ間の けふは人こそ かなしかりけれ 紀貫之(古今集・哀傷・八三八) 私の命も明日を知らぬ儚いものだとわかっていても、命がある今日はただ、あなたの魂が空へと昇ってしまったことを…

ふたつなき物と思ひしを

[詞書]池に月の見えけるをよめる ふたつなき 物と思ひしを 水底の 山の端ならで*1 いづる月かげ 紀貫之(古今集・雑上・八八一) この世にふたつとないものだと思っていたのに、水底から、山の端ではないところなのに月が出てきている。 (こんなところにも…