2010-12-01から1ヶ月間の記事一覧

月夜には来ぬ人待たる

月夜には 来ぬ人待たる*1 かき曇り 雨も降らなむ*2 わび*3つつも寝む よみ人しらず(古今集・恋五・七七五) 月夜だと、来てくださらないと知りながらもつい貴方を待ってしまいます。空が曇って月を隠し、雨も降ってほしい。そうすれば、淋しく思いながらも…

逢ひに逢ひて物思ふころの

逢ひに逢ひて 物思ふ*1ころの わが袖に やどる月さへ ぬるゝ顔なる 伊勢(古今集・恋五・七五六) 何度も貴方とお逢いしているのに、相変わらず恋わずらって涙している私の濡れた袖に宿る月までもが、涙で濡れた顔をしています。 (私の思いがこれほどまでに…

ほとゝぎす夢かうつゝか

ほとゝぎす 夢かうつゝか 朝露の*1 おき*2て別れし 暁のこゑ よみ人しらず(古今集・恋三・六四一) ホトトギスの声を聞いたと思ったのは、夢だったのか、それとも現実のことだったのか。朝露の置く暁の頃に目覚めて別れた貴女との思い出も、私にとってはそ…

佐保山のはゝそのもみぢ

佐保山*1の はゝそ*2のもみぢ 散りぬべみ よるさへ*3見よと 照らす月影 よみ人しらず(古今集・秋下・二八一) 佐保山の柞の紅葉が散ってしまいそうなので、日中だけでなく夜までも見よと言いたげに月が木々を照らし出している。 (秋の月までもが散るのを惜…

秋くれば月の桂の

[詞書]かつらのみや 秋くれば 月の桂の 実やは*1生る*2 ひかりを花と 散らすばかりを 源恵*3(古今集・物名・四六三) 秋が来ると、月の桂に実は生るのだろうか。光を花のごとく、散らしているだけのように見えるけれど。 (あまりに惜しみなく光の花弁を散…

天の原ふりさけ見れば

[詞書]もろこしにて月を見てよみける 天の原 ふりさけ見れば 春日なる*1 三笠の山*2に 出でし月かも*3 安倍仲麻呂(古今集・羈旅・四〇六) *百人一首 七番 大空を振り仰ぐと、美しく風情のある月が出ていた。あの月は、若い頃に幾度となく眺めた、春日にあ…

久方の月の桂も

[詞書]是貞のみこの家の歌合によめる 久方の*1 月の桂*2も 秋はなほ もみぢすればや*3 照りまさるらむ 壬生忠峯(古今集・秋上・一九四) 月に生えているという桂の木も、やはり秋に紅葉の時期を迎えるから、秋の月は一層美しく照り輝くのだろうか。 (きっ…

秋の月山辺さやかに

秋の月 山辺*1さやかに 照らせるは 落つるもみぢの かずを見よとか*2 よみ人しらず(古今集・秋下・二八九) 秋の美しい月が山辺を明るく照らしているのは、まるで落ちているもみじ葉の数を数えてみろと言われているかのようだ。 (それほどに月の光が明るい…