百人一首

長からむ心も知らず

[詞書]百首歌たてまつりける時、恋のこころをよめる 長からむ*1 心も知らず 黒髪の 乱れてけさは 物をこそ*2思へ 待賢門院堀河*3(千載集・恋三・八〇二) この想いは末永く続くだろう、と仰る貴方の気持ちも、信じてよいのかわからないのです。 寝乱れた黒…

今来むといひしばかりに

[詞書]題しらず 今来むと いひしばかりに 長月の ありあけの月を 待ちいでつるかな 素性*1(古今集・恋四・六九一) 今からお訪ねしますと貴方が仰ったばかりに、私は長月の夜長をやり過ごし、とうとう有明の月が見える頃まで貴方を待ち続けてしまいました。…

朝ぼらけ有明の月と

[詞書]やまとの国*1にまかれりける時に、雪のふりけるを見て詠める 朝ぼらけ*2 ありあけの月と 見るまでに 吉野*3の里に 降れる*4しらゆき 坂上是則*5(古今集・冬・三三二) 夜明け頃、空に残った有明の月の光が明るく射しているのかと見紛うほどに、吉野の…

天の原ふりさけ見れば

[詞書]もろこしにて月を見てよみける 天の原 ふりさけ見れば 春日なる*1 三笠の山*2に 出でし月かも*3 安倍仲麻呂(古今集・羈旅・四〇六) *百人一首 七番 大空を振り仰ぐと、美しく風情のある月が出ていた。あの月は、若い頃に幾度となく眺めた、春日にあ…

有明のつれなく見えし

有明*1の つれなく*2見えし 別れより 暁ばかり 憂き*3ものはなし 壬生忠岑(古今集・恋三・六二五)*百人一首 三十番 有明の月が、まるで貴女のようにつれなく見えたあの別れから、私にとって暁の時間ほどつらいものはないのです。 (月を見るたび貴女を思…