朝ぼらけ有明の月と
[詞書]やまとの国*1にまかれりける時に、雪のふりけるを見て詠める
朝ぼらけ*2 ありあけの月と 見るまでに
吉野*3の里に 降れる*4しらゆき
夜明け頃、空に残った有明の月の光が明るく射しているのかと見紛うほどに、吉野の里に降り積もった白雪であったよ。
(その眩さに思わず目を覚ましてしまったが、その代わり、この美しい景色を見ることができた。)
百人一首に採られている「有明の月」の歌は四首あります。
この歌は、壬生忠岑「有明の〜」に続いて二首めの紹介になります。
ただこの歌においては、「有明の月」そのものが詠まれているわけではありません。
吉野の里に降り積もった雪の明るさを「有明の月」の光と間違えてしまった、という、比喩の対象として「有明の月」が詠まれています。
今年の元旦には、このような雪明りを目にした方も多かったのではないでしょうか。