しのぶれど恋しき時は
[詞書]題しらず
しのぶれ*1ど 恋しき時は
あしひきの*2 山より月の 出でてこそ*3くれ
逢いたい気持ちを抑えていても、貴女を恋しく思った時は、山から月が出てくるように貴女のもとを訪ねてしまうのです。
(またすぐにお訪ねしますよ。だからきっと、そのときも優しく迎え入れてくださいね。)
★和歌の修辞★
枕詞(まくらことば):特定の語について、語調を整えたり情緒を伴わせる言葉。
※特に意味を持たないので、現代語訳をするときは枕詞の意味は考えずに訳す。
“山から月が出てくる”こと――それは、不変の自然の理です。
“山から月が出てくるように貴女のもとを訪ねてしまう”ということは、自然の理に匹敵するまでに貴女を想う心は強いのだ、と言いたかったのかもしれないなぁと感じました。
わたしの現代語訳はだいぶ意訳しておりますので、ご了承の上、ご鑑賞ください。
現代語訳の上段はなるべく歌の言葉に忠実に、下段のカッコ内は個人的な解釈を含む意訳・付け足しとなっています。