月影にわが身を換ふる

[詞書]題しらず



月影に わが身を換ふる 物ならば
つれなき人も あはれ*1とや*2見む


壬生忠岑古今集・恋二・六〇二)


もし私のこの身を月の光に換えられるなら、つれないあの人も、風情ある月を眺めるように私のことを見てくれるでしょうか。
(私は、あの人の眼に好ましく映りたい、ただそれだけなのです。)



★ 未然形 + ば ★

用言の未然形 + 「ば」=順接の仮定条件
 意味:もし〜だったら、〜なら




以前紹介した、百人一首にも採られている壬生忠岑の「有明のつれなく見えし〜」の歌とも通じるような、“月とつれない女性”の取り合わせ。
わたしはそれに、とても美しい情緒を感じます。

*1:あはれ〔名〕:(1)しみじみとした感動・風情・情緒。(2)哀愁、寂しさ。(3)愛情、人情

*2:や‐む(推量の助動詞「む」連体形):係り結び〈疑問〉