おほかたは月をも愛でじ
[詞書]題しらず
おほかた*1は 月をも愛で*2じ
これぞこの つもれば人の 老いとなるもの
そもそも私は月をも賛美しないだろう。月が昇って沈む、欠けては満ちる、その繰り返しが積もり積もれば、人の老いとなるのだから。
(人はこぞって月の美しさを賞賛するが、私はかえって無情であると感じるのだ)
「雪月花」という言葉があるように、月は美しい風景の代表格でもあります。
けれどこの歌では、その月を皆と同じく賞賛してはやらないのだ、というちょっと捻くれたような見方をしています。
わたしは、“美しいものしか持ちえぬ冷たい無情”というものが存在すると思っています。
月も多分に漏れず、それを持っていると思います。
何処となく人生を達観したような雰囲気は、先日紹介した、同じく業平詠の「月やあらぬ〜」の歌にも通ずるようにも感じます。