ふたつなき物と思ひしを
我が心なぐさめかねつ
[詞書]題しらず
我が心 なぐさめかねつ
更級*1や をばすて山*2に 照る月を見て
よみ人しらず(古今集・雑上・八七八)
私は自らの心を慰めることができずにいます。更級の姨捨山に照る月を眺めていると。
(美しく照る月は私の悪しき心を明らかにして、私を苦しめるのです)
★完了の助動詞「つ」・「ぬ」★
意味:(1)完了(〜テシマウ、〜テシマッタ)
(2)確述(キット〜、タシカニ〜)※助動詞「む」「べし」を伴うことが多い
※「つ」と「ぬ」の違い
「つ」…他動詞(その動詞の表す動作が他に働きかけるもの。目的語をとる動詞。「読む」「見る」など)について、その行為をする者の意志的な完了を表すことが多い。
「ぬ」…自動詞(その動詞の表す動作がそれ自身の働きとなっているもの。目的語をとらない動詞。「成る」「降る」など)について、無意識的な動作や自然に変わっていくようすを表すことが多い。
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[詞書]題しらず
今来むと いひしばかりに
長月の ありあけの月を 待ちいでつるかな
今からお訪ねしますと貴方が仰ったばかりに、私は長月の夜長をやり過ごし、とうとう有明の月が見える頃まで貴方を待ち続けてしまいました。
(来て下さるつもりがないのなら期待させるようなことは言わないで下さい。独り私が悲しい想いをするだけなのですから)
★月の異称★
一月…睦月(むつき)、孟春(もうしゅん)、初春(しょしゅん、はつはる)
二月…如月(きさらぎ)、仲春(ちゅうしゅん)
三月…弥生(やよい)、季春(きしゅん)、晩春(ばんしゅん)
四月…卯月(うづき)、孟夏(もうか)、初夏(しょか・はつなつ)
五月…皐月(さつき)、仲夏(ちゅうか)
六月…水無月(みなづき)、季夏(きか)、晩夏(ばんか)
七月…文月(ふみづき・ふづき)、孟秋(もうしゅう)、初秋(しょしゅう・はつあき)
八月…葉月(はづき)、仲秋(ちゅうしゅう)
九月…長月(ながつき)、季秋(きしゅう)、晩秋(ばんしゅう)
十月…神無月(かんなづき)※出雲大社に日本中の神々が集まるため、出雲国では神在月(かみありづき)と呼ぶ※ 、孟冬(もうとう)、初冬(しょとう)
十一月…霜月(しもつき)、仲冬(ちゅうとう)
十二月…師走(しわす)、季冬(きとう)、晩冬(ばんとう)
*1:そせい